2018年10月20日土曜日

爬虫類はだいたい絶滅危惧種

都道府県レベルで指定されている絶滅危惧種というのがあって、その地域で見られなくなりつつある生物が指定されている。 池の水を抜いてみるテレビ番組でよく言及されていたりするので、そういうリストの存在は知っていたが、ウェブ上で見ることができるのは知らなかった。 東京都の場合レッドデータブック東京というサイトで調べることができる。

爬虫類を普段の生活の中で見掛ける機会がそう多くない地域に住んでいるのは確かだが、見ないわけではない。 その見ないわけではない種がことごとく絶滅危惧種に指定されていたのを初めて知った。

まずはヤモリ。 学名 Gekko japonicus、和名はニホンヤモリ。 家の壁とか窓とかに主に夜見ることが多いが、東京都区部では絶滅危惧 II 類に分類されている。

ついでカナヘビ。 学名 Takydromus tachydromoides、和名ニホンカナヘビ。 庭木などの上で日向ぼっこしていたり草むらを歩いていたりするかわいい顔をした細長いトカゲだが、これも区部では絶滅危惧 II 類に分類されている。

トカゲ。 学名 Plestiodon japonicus、和名ニホントカゲ、という扱い(ヒガシニホントカゲとはしていない)。 カナヘビよりややずんぐりしていてテカテカしている、若い個体は青っぽい、トカゲ。 これは区部ではよりランクの高い絶滅危惧 I 類に分類されている。

これらトカゲ類が絶滅危惧種としてリストされているなら、当然それ以上に見る機会の滅多にないヘビ類は当然絶滅危惧 I 類だ。 と思いきや、アオダイショウはもう少しランクの低い準絶滅危惧だった。 意外にいるところにはいるのか? 一方、その他のシマヘビ、マムシなどは区部では予想通り絶滅危惧 I 類だ。

そういうわけで、東京都区部の爬虫類はだいたい絶滅危惧種、という状況を知ることができた。 その他の県の状況は日本のレッドデータ検索システムなどから調べることができる。

2018年10月10日水曜日

「函数」音訳説について探してみる (まとめ)

これは

の続きになるので、まずはそちらを読んでもらえると解りやすいと思う。 ざっくり言うと、函数は function の中国における音訳、という俗説(「函数」が音訳というデマと、本当の語源参照)の起源を求めて、できるだけ古い言及を探そうというクエストの記録。 先に結論から言うと、遠山啓「キュート数学I」(1967)ついで「角川新字源」(1968)という1960年代末発行の二つが見つかった。

遠山啓

既に「関数を考える」(1972)と「数学は変貌する」(1971)は見つけていたが、さらに古いものが見つかった。 「キュート数学I」(1967)だ。 元は三省堂から出版されたもののよう(実物は見ていない)だが、二度形態を変えて再度刊行されている。 一つめが太郎次郎社の遠山啓著作集シリーズの「数学教育論11 数楽への招待I」(1981)、 もう一つがソフトバンククリエイティブの「基礎からわかる数学入門」(2013)だ。

先生●それには歴史的な事情があるのだ. ヨーロッパの数学が中国に伝えられたとき, function は「函数」と訳された. 中国語ではやはり function の意味をもっているが, 同時に音も似ているらしい. それがそのまま日本に伝えられ, 「函数」となり, 「函」が当用漢字にないので, それがさらに「関数」になったわけだ.

引用は「基礎からわかる数学入門」によるが、「数楽への招待I」でも約物の違いぐらいで内容は変わらない。

角川新字源

既に辞書編で書いたように、新字源は1968年の初版から音訳説を採っていると思われる。 若干の歯切れの悪さは、Google Books にある1978年発行のもののスキャンより古い時代のものを当たった訳ではないので、 細かい修正の一部として書き直された可能性が捨てきれないことによる。 (スキャンでない現物は近所の古本屋で1989年発行のものだけは見ることができ、1978年のものと同じ文言だった。)

その他

「広辞苑」は辞書編で第五版(1999)まで遡ったが、その後第四版(1991)も「函数」の項で音訳説を紹介しつつ「関数」に飛ばす、という同じ内容であることを確認した。 期待して第三版(1983)を調べたら、こちらは音訳説無しで「関数」に飛ばしていた。 つまり、1991年というわりあい新しい採用時期だったことになる。 ちなみに第二版補訂版(1976)までは「函数」の項目が主で、「関数」とも書く、という説明が最後に付く形。

第七版新版(2011)に音訳説の載っていた「岩波国語辞典」は初版(1963)と第二版(1971)を見ることができて、どちらも音訳説への言及はなかった。 「広辞苑」と同様の採用時期だとすれば第五版(1994)くらいからの言及だろうか(未確認)。

この先

ということで、私の探した範囲では遠山啓「キュート数学I」三省堂(1967)が最古の言及だった。 ただ、「角川新字源」が1968年と非常に近い年の出版なので、感覚的にはもう少し古いものがあってもおかしくないような気がする。 すでにこの年代の本は入手が困難で、これ以上の探索はかなり大変だ。 挑戦者の出現を期待したい。

以上、「函数」音訳説について探してみた、でした。


追記: この記事は「函数」音訳説関連の3番目の記事に当たる。

2018年9月22日土曜日

「函数」音訳説について探してみる (辞書編)

前回は数学の本の中で音訳説に言及しているものを探したが、今回は辞書。 Google Books で検索したら角川新字源が引っかかったので辞書も見た方が良いのかな、というぐらいのことだったのだが、古い辞書を見るのは意外に難しい。

角川書店

武部良昭 「漢字の用法」(1976)が前回見つけた辞典類における一番古い言及だった。 で、新字源。 実物は今のところ手に取れていないが、Google Books を信じれば、初版(1973)に

函数の函は function の fun の発音を表わす。今は関数と書く。

との記述があるらしい。 (疑っているのは版の扱いで、本当に初版のスキャンなのか、初版が1973年であるところの「新字源」の後の版のスキャンなのかという部分。)

追記1(2018-09-23): 改訂版(1994)を見ることができた。上の引用と同じ文言だった。 そして、初版は1968年。 「1973年」の出所が知りたくて、Google Books で奥付を探してみた(判明した初版出版年の「昭和四十三年」で書籍内検索した)のだが、 出てきたのは昭和五十三年一月二十日一二五版発行と1978年を示唆する結果だった。 版と数えてはいるが要は刷のことだろう。 ということで若干引っかかりは感じるが、つまり、改訂版以前の細かい修正の一部として取り入れられた可能性は残らなくもないが、 現時点で発見された一番古い音訳説が「新字源」初版(1968)と言って大丈夫そうだ。

追記2(2018-09-23): 「角川国語大辞典」(1982)にも表記に関する注意として次のように書かれている。

函数は function の音訳。

三省堂

「新明解国語辞典」第六版(2005)では函数の見出しで最初に次のような説明が入る。

function の、中国での音訳。 「函」は「独立変数を含む」という意味も兼ねる

第四版(1989)でも同じ内容を確認した。 初版まで遡れれば1972年となるが、第三版以前については未調査。

一方「三省堂国語辞典」第七版(2013)では語源に言及していなかった。 「大辞林」第三版(2006)も「例解新国語辞典」第二版(1990)も言及無し。 (追記 2018-09-23: 「広辞林」第五版(1973)も言及無し)

岩波書店

意外にも音訳説を押し出してきているのが岩波書店だ。 言わずと知れた「広辞苑」は少なくとも第五版(1999)以降、函数の見出しに以下の説明だけある。

(「函」は function の fun の音訳)⇒かんすう(関数)

実質的な内容の定義は関数の項にある、というわけだが、音訳説だけは載せておきたかったということだろうか。

他の辞書にも同様の記述が見える。

「函」は function の 'fun' の部分の中国音訳、「関」はその書き換え。

「岩波国語辞典」第七版新版(2011)

「函」は function の fun の音訳。

「岩波新漢語辞典」第三版(2014)

どの辞書も上記以前の版は未調査。 広辞苑の初版(1955)第二版(1965)あるいは国語辞典の初版(1963)辺りはできればチェックしたいところ。

小学館

「大辞泉」第二版(2012)に語源についての言及無し。 「日本国語大辞典」第二版(2001)にも語源についての言及無しだが、もちろん国語大辞典の売りは初出の調査にあって、「函数」については哲学字彙(1881)工学字彙(1886)が挙げられている(他にもう少し後の寺田寅彦の用例も)。

その他

その他の辞書では今のところ音訳説を見つけられていない。 一応見たものを列挙しておくと、「大日本国語辞典」修訂版(1939)「旺文社国語辞典」第十版(2005)「新潮日本語漢字辞典」(2007)「学研現代新国語辞典」改訂第五版(2012)。 (追記 2018-09-23: 「福武国語辞典」(1989)「講談社カラー版日本語大辞典」第二版(1995)「講談社国語辞典」第三版(2004)「明鏡国語辞典」第二版(2010)「集英社国語辞典」第3版(2012)。) 漢和辞典ではそもそも「函」の項に「函数」が出てこない。

辞書の古い版が手近な図書館に置いていないという現実に直面して難航しそうなので、たまたま古い版を持っているという方はコメントでも残していただけると喜びます。 もちろんここに挙げていない辞書に関しての情報でも。


追記: この記事は「函数」音訳説関連の2番目の記事に当たる。

2018年9月17日月曜日

西洋絵画と幾何学

西洋絵画では東洋絵画とは違い境界線を引かず、面の連なりとして画面を構成するという。 つまり東洋絵画で明示される曲線は、西洋絵画では人間が勝手に見出すに任される。 ということで、曲線とは領域の境界線、なる指導原理にしたがって定義できるか考えてみる。

まず \(\mathbb{Q}^2\) を用意する。 とりあえず、ここで用意した有理数の組自体を点とは呼ばないでおく。 まあ、あとで点を定義するとこれらも点と呼ばれる資格を持つはずだが。

《線分》を二元 \(p, q \in \mathbb{Q}^2\) の線形結合 \(\lambda p + (1 - \lambda) q\) として得られる \(\mathbb{Q}^2\) の部分集合と定める。 ただし、\(\lambda \in \mathbb{Q}\) かつ \(0 \leq \lambda \leq 1\) である。 《線分》は \(p, q\) を結ぶと言うことにしよう。 《線分》は定義したい曲線とは無関係な道具立ての一部である。

次に、 \(\mathbb{Q}^2\) を2つの部分集合に分割することを考える。 \(S \subset \mathbb{Q}^2\) と \(T = \mathbb{Q}^2 \setminus S\)。

\(S\) が《連結》とは \(S\) の任意の2元の間を、有限個であれば他の元を何個抜いても有限個の\(S\)内の《線分》で結べることと定義する。 たとえば、単位円の内部 \(S = \{(x, y) \in \mathbb{Q} | x^2 + y^2 < 1\}\) は《連結》である。

いま \(S, T\) がどちらも《連結》で、どちらも何らかの円を含むと仮定する(広がりをもつ、と言いたい)。 \(s \in S\) が《境界》にあるとは、\(s\) を中心とするどんな円も \(S, T\) とそれぞれ空でない共通部分を持つことと定義する。 さらに、\(B_S \subset S, B_T \subset T\) がどちらも《境界》にある元の集合のとき 分割 \(S' = (S \setminus B_S) \cup B_T, T' = (T \cup B_S) \setminus B_T\) は \(S, T\) と《同値》であると定義する。

このとき、分割の《同値》類 \(S, T\) を「曲線」と定義する。 特に、\(S\) が(または定義は対称なので \(T\) でもいいのだが)有界ならば、「閉曲線」である。

たとえば、単位円は \(S = \{(x, y) \in \mathbb{Q} | x^2 + y^2 < 1\}, T = \{(x, y) \in \mathbb{Q} | x^2 + y^2 \geq 1\}\) の《同値》類。 《境界》にある元は \(x^2 + y^2 = 1\) の有理解だから、それらを \(S\) の側に入れるか \(T\) の側に入れるかしたすべて。

…といったことろ(最後の「すべて」に非可算無限個の同値な分割が現れるのを見た辺り)で力尽きた。 だいぶ雑だが、ある意味でデデキントの切断を2次元に上げれば有理数体だけに基づいて曲線が定義できるんじゃないか、という話でもある。

2018年9月12日水曜日

「函数」音訳説について探してみる

Twitter に書こうかと思ったが、ちょっと長くなるのでこっちに書くことにする。

「函数」が音訳というデマと、本当の語源というブログ記事についてツイートされてるのを見た。 詳しい内容はリンクを辿って読んでみて欲しい。 その記事中の「函数」音訳説という部分で、引用されているものが意外と新しい1980年代以降のものなので、さすがにもっと古いだろう、と探してみた。

1. 武部良明「漢字の用法」(1976)

このほか武部良明『漢字の用法』(角川書店1976)にも同様の記述があるという(未確認)。

とあって、たまたま同書(三版)を持っているので調べてみた。 「関数」ではなく「関・函」の項にあった。

「函」は「いれる」意味。 したがって、「函数」という漢字の組み合わせからは、「対応して定まる数」という意味は出てこない。 「函数」については function という原語の音 fun を、「函」の音カン(現代中国語 han)で写したものとされている。 これに対し現代表記の「関数」は、全体の意味を「かかりあう数」と考え、「函」の部分を、同音で「かかりあう」意味の「関」に書き換えたものである。

2. 遠山啓「関数を考える」(1972)

近所の図書館で見つけた。 会話体の文章の中で、先生役が言っている。

はっきりはわからないが, 中国語の発音では function と似ていて, しかも意味も近いらしいのだ.

3. 遠山啓「数学は変貌する」(1971)

2012年にちくま学芸文庫から出た「現代数学入門」所収。 「関数を考える」が中学生ぐらいを対象にしたシリーズの一冊なので、そこでいきなり初披露ということは無いだろうと見当をつけて遡って探した。

機能とは簡単にいうと働きです。 ライプニッツが初めてファンクションという言葉を使った. ライプニッツはドイツ人ですが, ドイツ語は当時はいなかの言葉みたいで, フランスが文化の中心であったから, フランス語で書いてありますので, フォンクション (fonction) です. もとは日本では「函数」, あとになって「関数」と改めたのです.

なぜこんな函の数という妙な言葉を使ったか, これは中国からきた字です. 中国人は各国語を音まで似せて訳すことがうまい. フォンクションは中国語で函数を中国読みしますと非常に似ているのだそうです. しかも意味も非常に似ている. これは「含む」という意味だそうです. 函の中だから何かを含んでいる. 函という字でもないという説もありますが, 要するに中国人にはわかるかもしらぬが, 日本人にはわからないものを使ったということが, 函数をわからなくした原因の一つです. これだけでは何のことやらわからない.

だいぶ伝聞の説だと強調している風なので、もう少し遡れるのかもしれない。 が、見つけられたのはここまで。 以降は、この説に言及していないものを少し紹介しておく。

A. 吉田洋一・赤攝也「数学序説」(1954)

2013年に(これも)ちくま学芸文庫から出ている。 引用は‘函数’という語に対する脚注。

英語 'function' (ラテン語 functio から出た語) の訳語. 関数とも書く. functio という言葉はライプニッツに始まるものである.

ライプニッツの使った言語はフランス語なのかラテン語なのか。 というのはさておき、函数が中国語由来とも言っていない。

B. 高木貞治「数学の自由性」(1949)

2010年にいろいろ寄せ集めて(これも)ちくま学芸文庫から同名で一冊にして出している中の一部で、年は序文の署名についている年を採用したが、引用部分は雑誌掲載が1939年の文章への追記部分なのでもう少し以前に書かれたものだろう。

中でも, 函数だの, 方程式だの, 文字の意味はわからないで, ただ慣用久しきために平気で通用しているのもある. 逆説めくけれども, こういうのが実は数学用語として理想的なる例というべきであろう. function(作用, 機能)といっても何のことだかわからないから, やっぱり同じく無意味なるカンスウでよいではないか!

高木貞治は、謙遜かもしれないが、意味不明・無意味な語という扱いだった。

まとめ

遠山啓が説を生み出した主犯ではないにしろ広めるのには大きく貢献したのではないかと。 伝聞だと信じれば少なくとも1970年代初頭にこの説に触れていたことになる。 数学界での俗説という可能性もあるが、教育関係から伝わってきた可能性も疑われる。


追記: この記事は「函数」音訳説関連の最初の記事に当たる。

2018年8月26日日曜日

炭酸水

今年の夏はとても暑く、水分を取らないといけないと思って、ただの水を飲むのは辛いので炭酸水を良く飲んでいた。 一番飲んでいたのはウィルキンソンタンサンだったが、いろいろスーパーのプライベートブランド的なものも含めて試していた。

最近、ゲロルシュタイナーを手に取った。 炭酸入りのミネラルウォーターということで、若干ジャンルが違うし値段も倍ぐらいしたが、おいしすぎてびっくりした。 炭酸が強すぎず、後味にわずかに苦みがあってすっきりする。

調子に乗ってサンペレグリノも飲んでみたが、こっちは後味が今ひとつだった。 近所で見掛けた炭酸入りのミネラルウォーターはその二つぐらいだったのでまあ他のを見掛けたら手に取ってみたいと思うが、とりあえず今のところダントツにゲロルシュタイナーがおいしいという評価。

2018年5月22日火曜日

接続行列

昔書いた論文 (末尾参照) の前半部分は何だか無駄が多かったような気がふいに湧いてきました。

無向グラフの接続行列を考えます。 辺 \(e_j\) が頂点 \(v_{i}\) と \(v_{i'}\) に接続しているとき、\(i,j\) 成分と \(i',j\) 成分に \(1\) が入り、 \(j\) 列目の残りの成分は \(0\) となるような行列です。

接続行列の核、つまりこの接続行列を(\(\mathbb{Q}\) 上)線型写像だと思った時の核は、長さが偶数の閉じた道に対応します。 ここでいう「道」は、同じ頂点や辺を通ってもいいけど同一の辺への折り返しは無し、です。 なぜそうなるかは、核が「辺に数を割り当てたときに接続する各頂点上で和が 0 になるものを集めたもの」だからです。 たとえば長さが偶数しか出てこないのは正と負がバランスするためだし、折り返しができないのは折り返しの前後の同じ辺に正と負を同時には割り振れないからです。

というようなことが、グラフ理論の本にはなかなか出てこないような気がして一応書いています(もちろん知られている議論です)。 \(\mathbb{F}_2\) 上での核がサイクルに対応します、みたいな命題は見ますが。

次に、ハイパーグラフで同じように考えます。 接続行列・頂点・辺という用語をそのまま流用します。 ハイパーグラフの接続行列とは、辺 \(e_j\) が頂点 \(v_{i_0}, \ldots, v_{i_k}\) に接続しているとき、\(i_0,j\) 成分, \(\ldots\), \(i_k,j\) 成分に \(1\) が入り、 \(j\) 列目の残りの成分は \(0\) となるような行列です。

考えたいハイパーグラフは、無向グラフの共通頂点を持たない奇サイクル二つを合わせたものを一つの辺として追加したようなものです。 この辺に \(2\) を割り当てて、元にした奇サイクル上の辺にそれぞれ \(-1\) を割り当てるとハイパーグラフの接続行列の核に入ります。 いわばこの関係が追加する辺の定義です。 他にも追加した辺に関わる関係式が「接続行列の核を計算するだけで」手に入ります。 グラフに対する閉じた道のような一言で説明できる何かに対応しているわけではないですが、議論は完全に同じように進みます。

論文ではこういう方法を採らずに多項式の用語で、生成系に入る二項式の形を挙げていってこれで十分、みたいなことをやっていました。

Matsui, T. "Ehrhart Series for Connected Simple Graphs" Graphs and Combinatorics (2013) 29: 617. https://doi.org/10.1007/s00373-011-1126-y

2018年5月6日日曜日

メンテナンス

久しぶりにこのブログのテーマ設定を開いたらいつの間にか「モバイル」という別設定ができていて、MathJax がモバイルでは効いていないことが発覚したので修正した。 まず、モバイルのテーマを「カスタム」にする(多分それ以外の方法だとタグを埋め込めない)。 「HTML編集」で MathJax の読み込み用タグを(いつの間にかできていた)モバイルとの条件分岐の外に出す(非モバイルのブロックに入れられていたので)。 以上。

ついでに MathJax の CDN も一年遅れで cdnjs に移行した。

2018年5月4日金曜日

肩掛けスピーカーを買ってみた

前回の続き、と言えなくもない。

Mac mini の一番の不満点は、音がしょぼいこと。 今までの MacBook Air では内蔵スピーカーの音で特に不満なく過ごしていたのだが、 Mac mini では音楽を聴くためにスピーカーが欲しいと思ってしまった。

据え置き式のスピーカーとか、ヘッドホンとか、選択肢はいろいろあるが、 場所をとらないし耳に接触しない今流行の肩掛けスピーカーにしてみた。 買ったのは JBL Soundgear というやつ。 4月下旬に出たばかりで、だいたい2万円。

使用してみた感想としては、長短相半ば、といったところ。

  1. 首から上に直接接触しないので不快感が無い。が、長時間使うと若干肩がこる。
  2. 立ち上がったり寝そべったり自由に動ける。が、少し離れると音飛びする。
  3. 電源ON/OFF時に鳴る通知音がうるさい。ボリュームを絞れないのはどうかしている。

2番目の点に関して、ワイアレストランスミッターというのを挟んでみた。 これはイヤホンジャックの音を Bluetooth で飛ばしてくれるというもの。 TaoTronics という中国メーカーのやつ(Soundgear にトランスミッター付きのもあったみたいだけど買うときは気づかなかった)。 だいたい3千円。 直接 Mac mini の Bluetooth から受けていたときは、本当に音が途切れることがあったが、 これを挟むと同じぐらい離れてもアナログレコードのノイズみたいなのが時々鳴る程度までは改善する。 音楽を聴く用途としては、結局あまり嬉しくないわけではあるが。

さて、最後に音質の話。 といって、語れるほど音質にうるさいわけではないので、大まかな注意点的なものを少し。 最初小さめの音量で聞いていたら低音ばかり強調されて人の声などの中音域が沈んで聞こえたが、音量を上げたら割と自然な感じに聞こえた。 これが装置側の都合なのか、人間(私)の聴覚の問題なのか判らないが、音量の好みと音域のバランス感がかみ合わない可能性はある。 トランスミッターを使うときは、もしかしたら常識の範疇かもしれないが、トランスミッターの入力になるイヤホン出力は最大にして使うべき。 最初これに気付かずにくぐもった音になり首をひねった。

2018年4月9日月曜日

MacBook Air の死亡

2018年3月28日、全然新しいモデルが出ないため買い替えずに使ってきた MacBook Air が死んだ。 TimeCapsule がしばらく前に死んでバックアップしていなかったので NAS を導入して TimeMachine として使う設定をした矢先だった。 設定だけしてまだバックアップが一度も終わっていない、その状態で突然、キーチェーンが読めない、というようなメッセージが出始めて(止せばいいのに)再起動をかましたら二度と立ち上がらなくなった。

一応ビックカメラのカウンターに持ち込んでみたものの、SSD が破損して修理不能と薄々そんなことではないかと思っていたことが裏付けられただけだった。

仕方がないので、買い替え機種選定。 正直会社員になってから MacBook Air を家の外に持ち出す機会は全然なくなっていたので、必ずしもノートである必要性はない。 それに、今アップルのノートはあまり魅力的な機種がない。 ということで、アップルなら Mac mini。 ノートが欲しければ、台湾メーカーの手頃なの。 ぐらいで漠然と考えて、Windows 機を買って Windows で使うのはきっと無理だから Linux を入れることになるという面倒臭さに負けて、結局 Mac mini。 Dell の24インチモニタと合わせて10万ぐらい。

Amazon で購入したら、Mac mini になぜかアカウント設定がされていて、OS 再インストールからしないといけない、といったハプニングがあり、 手持ちの Bluetooth ThinkPad キーボードだけで乗り切るつもりが、それを認識させる前にキーボードが必要になったために急遽有線キーボードを買う羽目に。 安物のキーボードは約1000円で買えるという学びを得た。

そんなこんなもありつつようやく10日ぶりにネットに繋がる生活を取り戻しつつある。 (いや、もちろんモバイル端末で Amazon での購入含め行なっていたわけで、ネットから遮断されていたわけではないのだけれど)

さて、最後に残った問題が、色々なデータが失われたこと。 何せ、最初に書いたように TimeMachin が機能し始める前に死んだので、バックアップが2月ごろに手動で取った部分的なデータ(メール、音楽データ、書類フォルダ)ぐらいしかない。 git レポジトリとかは、github, bitbucket に上げてなかったものは(大昔のバックアップに残っているむしろ要らなそうなもの以外)消えた。 割とヤバい感じなのが各種アカウント周り。 パスワードを忘れたサービスは数知れず、ssh キーは失われた。 iCloud のキーチェーンと、google のアカウントに紐づいた Chrome のパスワード情報はあるので、言うてそこまでではないかも知れないが、今一番の気がかり。

そして、最後の砦たるそのバックアップに使っていたディスクからも時々くしゃみのような異音が…。 コピーしている途中で時折「***内の一部のデータを読み込めないか書き込めないため、操作を完了できません。(エラーコード-36)」と出る。 ヤバいヤバい

2018年3月12日月曜日

3月10日-11日鳥羽・名古屋

1泊2日で鳥羽と名古屋に行ってきた。ということで、メモ的な。

鳥羽

主目的地は鳥羽水族館。 一人で来館する人を対象とした「ひとリウム」という企画をやっていて、しかも3月10日はへんな生きもの研究所の生物がテーマだという。 へんな生きもの研究所の飼育日記がいつも面白いので、これはちょっとそそられる、というのが唐突に鳥羽なんぞに行く動機である。

朝の8時前に家を出て、1時少し前に鳥羽駅に着く。 そこから10分ほど海沿いを歩くと鳥羽水族館である。

実際にイベントに参加してみたら意外にも女性の方が多かった。 参加者は10名ぐらいだったか。 話をしてくれた飼育員はいつもその飼育日記を書いている人ではなく、 最初に餌やりを5種類ほど見せてくれたのだが、 もっとへんな生きものたちへの偏愛を語ってくれるのかと思っていたので、いささか拍子抜けの感が。 その後、水槽を裏側を見せてくれたりなどイベント自体は30分ほどで終了。

一通り館内を見て回って思ったのは、水槽の中の生き物が他の水族館に比べて密度が高いということ。 ウツボがうじゃうじゃとか、伊勢エビがわさわさとか。

へんな生きもの研究所にももう一度行ってじっくり見て回った。 ユミヘリゴカクヒトデのシダムシ(寄生する甲殻類)の標本とか、 その飼育日記で取り上げられ新種と確認されたトリカジカエラモグリというウオノエの一種の標本とか、 鏡餅のように二段重ねになるウニとか(意外に実物は小さい)、 移動はしないけど体の各部はそこそこ動いているダイオウグソクムシとか。 飼育日記がよりいっそう楽しめそう。

水族館をじっくり見ても3時間も持たなかったので、少し散歩。 鳥羽市立図書館にポータルを落としに行き、鳥羽城跡を経由して駅へ。

名古屋

宿を名古屋に取って一泊したのは、ついでに降り立ったことのない名古屋を見て回ろうと思ったから。

ということで、基本的に徒歩で名古屋城とか…観光地っぽいのはそこだけか。 大須の近くは通り過ぎたし、堀川沿いも少し歩いた。 この日はマラソン大会(マラソンフェスティバル名古屋愛知)とかいうので交通規制で街が分断されていて、街の東側には行くのが大変そうだったので、そっち方面はまた次の機会ということに。 で、名古屋城だが、天守閣は昭和に空襲で焼けて建て直したというだけあって、いわば城の外観をした博物館みたいなもの。 リアリティの再現に向かわないのが昭和っぽいな、という感想。 本丸御殿を現在再建中で一部が公開されているが、こちらはリアリティ追求型でとても現代っぽい。

名古屋メシは、お昼にきしめんを食べたぐらい。 まあ、米を選択肢に入れない、朝は食べない、となると選択肢はほとんどない。

新幹線

さて、帰ろうと思ったちょうど午後4時過ぎに静岡県内で停電して新幹線が止まってしまった。 復旧を待つ選択肢もあったとは思うのだが、いつも西から帰るときに一瞬だけ考えて結局実行に移したことのなかった、中央本線ルートを使うときが来た! と、長蛇の列のカウンターで新幹線から中央本線の特急に変更してもらい、いざ。 17:40発の長野行き「しなの」で塩尻まで、そこから新宿行き「スーパーあずさ」に乗り換え。 塩尻では30分ぐらい待ち時間があるし駅そばでもと思っていたら19時で閉店していた。 そう、この時点で2時間が経過しており、東海道新幹線も再開したとか何とか…。 で、真新しいスーパーあずさで立川まで来ると、中央線は三鷹で乗り換えなくて良い各駅停車運行の時間帯になっていた。

ということで、中央線で東京に出て新幹線で名古屋まで、名古屋から近鉄で鳥羽、鳥羽から名古屋へはJRの快速みえ、そして名古屋から中央本線、とこの二日の主な鉄道移動が図らずも一筆書きルートだった。

2018年1月2日火曜日

2017年の読書

2018年が始まったので、2017年に読んだものの中で印象に残っているものを紹介する。 去年も書いていたのでとりあえず書き始めてはみたが、そこまで鮮烈な印象の本がなかったりする。

デイヴィッド・ホロビン「天才と分裂病の進化論」 ジュリオ・トノーニ / マルチェッロ・マッスィミーニ「意識はいつ生まれるのか」 前者は脂肪の代謝に注目して統合失調症と人類の進化を説明しようという試みで、 後者は脳がどれぐらい複雑になりどう機能すれば意識があると言えるかを測る理論について。 どちらも、定説とはなっていない理論の本。 定説となっていない分、勝手に空想を膨らませる余地があって楽しい。 その他、グリア細胞の本とかアルツハイマーの本とか、わりと2017年の読書対象は脳に関わるものが多かったかな。

マンガは、読み続けているものを除くと白浜鴎「とんがり帽子のアトリエ」が一推し。 この作者は2013年の読書に紹介した「エニデヴィ」の人。 つまりまあ新規開拓は特にめぼしいものはなかった。

数学の本は、幾何が絶望的に解っていないなあと思ったので幾何寄りのものが多かった。 IT系はドメイン駆動の本も読んだけど、一番記憶に残っているのは Elixir かもしれない。

※本のリンクはamazonアフィリエイトです。